2017年4月12日水曜日

わたしの新京都20景(4)

わたしの新京都20景(3)
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16/20 月

中国ほどではないにしても、日本においても陰暦はまだまだ消滅しそうにない。日程を太陽暦に移行した上に、さらに週末土日に再度移行させられた祭事も少なからずだが、今日が陰暦の何月何日かを知っていると、ふといにしえの京都に出会うことがある。見事な月は仲秋の専売ではない。旅行前の下調べのひと手間が、同行者のサプライズを誘う。

17/20 御所

御所は上京の中心にある。宮内庁管轄の御所と環境省管轄の京都御苑からなり、近年外務省管轄の京都迎賓館がここに割って入った。この迎賓館について、すくなくとも泉下の孝明帝はお喜びではあるまい。御所はその総称であって、京都市民にとってはまず公園であり、通勤通学路であり、ときに遠い皇室をしのぶところでもある。

18/20 仏

意外なことだが、CNNの20選の中には、たった1枚の仏像もなかった。悦楽空間としての京都には仏像は無用だ、ということなのだろうか。それとも単に無関心だったのか。もっとも名立たる仏像の画像を商用利用するとなると、結構な費用を請求される。おそらくCNNは節約をしたのだと思うが、しかし町内にはお地蔵さんがあり、また野に置かれた石仏も京都には無数にあって、これこそが住民庶民の信心の対象。そして写真可である。

19/20 雪

春夏秋冬の最高気温、最低気温を比べると、京都も大阪もそれほどちがいがない。ただ冬の午前の冷え具合はきびしい。盆地の底に三山から滑り落ちてきた冷気が溜り、最高気温の出現が午後遅くになるからだ。しかし雪は滅多に降らない。雪がほとんどない、風情のない、寒いだけの冬になることも近年多い。

20/20 四条

京都で繁華街というと、それは河原町のことであった。しかしバブル崩壊後、金融街の烏丸が整理されて、おしゃれな新規出店はそっちに増えた。しかししばらくすると河原町への出店のハードルは下がりはじめ、このごろではこちらに面白い店がチラホラだ。河原町と烏丸、そのシーソーゲームを東西で結ぶ四条の現状はどうなのか。わざわざ交通流入を制限する改造をやったことと、大丸、高島屋といったデパートが振るわないために、現在いささか貧血状態のようだ。

2017/04/11 若井 朝彦

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2017年4月11日火曜日

わたしの新京都20景(3)

わたしの新京都20景(2)
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11/20 世界遺産

CNNが選んだ20枚の写真のうち、ユネスコ登録世界文化遺産からは「金閣寺」「東寺」「清水寺」「醍醐寺」の4つが入選。その記事においても「ここはユネスコ登録済み」「もちろん世界遺産だ」と抜かりなく強調。だが京滋にある17もの世界文化遺産、ほんとうに大切にされているところといったらどこだろう。目先の利に迷って遺産の食いつぶし、といった事例も少なくないのだ。(この写真のみネガフィルムより)

12/20 神像

明治に神仏が分離されたとはいえ、「神も仏も」といった古来の習俗は衰えてはいない。しかし新しい神像仏像も造られて、氏子や檀家の信仰を集める。新しいものが造られることで、古いものにもしかるべき立ち位置が与えられる。

13/20 大学

京都の人口構成の中に一定の割合を占める大学生。マンモス化の過程で、学舎は郊外へ、他県へと拡散したが、近年は都心回帰が顕著。木造町家を借上げるなどし、サテライト教室にするといった例も見られる。北陸新幹線金沢開業以来、京都の大学も危機感が増し、工夫や趣向、また生涯学習の取込みに躍起だ。

14/20 発掘

原初の平安京とはいったいどんなものだったのか。18世紀に藤貞幹(1732-97)と裏松固禅(1736-1804)の名コンビが模索をはじめて以来、今日にいたるまで考古的探究には途切れがない。無用に見えても実に大事な学問ではあるが、資金、人材が今後も十分に供給されるかどうかは心許ない。たいていの場合、発掘現場は工事現場。現状は保存されず資料のみが残る。その多量の資料をAIが読込んで、劃期的な解析結果を京都人に突きつける日が、やがてやってくるかもしれない。

15/20 鳥獣

京都は公園の少ない都市である。たが社寺が緑地を有しており、これでなんとかバランスが保たれている。鳥たちが頼りにしているのは、その飛び飛びにある樹冠や池。しかし150万に近い人口を擁しながら、これほどまでに山に囲まれ、また山に近い都市が他にあるだろうか。ときに珍しい獣が街中に現れるのはそのためだ。

2017/04/10 若井 朝彦

わたしの新京都20景(4)
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2017年4月10日月曜日

わたしの新京都20景(2)

わたしの新京都20景(1)
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6/20 八寸

わたしはフードポルノは好まない。しかし京料理の八寸だけはその自制をみずから破る。かならず季節のものを用い、小さい器に巧みに盛り込み、しかし余白はかならず残しておく。あたかも食材と食器による俳句。栄養学ともガストロノミーともまた違う何か。

7/20 家

数寄屋造りの町家、商家の町家といろいろあるが、ほっとするのは、こじんまりした職人町の木造、また郊外の木造。路地やら家の前で野菜の無人販売をしている所はまだまだ多い。

8/20 小路

あるときのこと、タクシードライバーが問わず語りに話しはじめた。「京都にやって来て思ったことは、細い道にもいつも人が歩いている。夜でも多い。だから京都には犯罪が少ない」のだと。だからそうなのかはわたしにもよくわからない。だが、他の都市に比べてということでなら、職と住も、食と住も、街中で接近していることはたしかだ。

9/20 近代現代建築

社寺仏閣古建築の多い京都ではあるが、新しくて珍しいもの、近未来的なものもまた少なからず。この重層性が京都の肝かもしれない。肯定的にいえば懐が深い。しかしおそらく本当の所は、自分にとってよく判らないものは、あえて関知干渉せず。

10/20 鉾町

京都の中心部、祇園祭の鉾町も、あるときまではドーナツ化が止まらなかった。だが最近は高層住宅が増え、人口の減少は底を打ったようだ。新しい住民が祭に加わる例も多い。観光化にも歯止めがかかり、催事から歳事へ。歳事から祭事へという流れが見える。

2017/04/09 若井 朝彦

わたしの新京都20景(3)
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2017年4月8日土曜日

わたしの新京都20景(1)

先日、4月3日のこと、アゴラに安田佐和子さんのブログ

MY BIG APPLE – NEW YORK –

から
『京都は、評判に違わぬ美しい街なのか?CNNが検証』

が転載されていた。楽しく拝見いたしました。そこで安田さんが紹介していたCNNのWEBは、

Does Kyoto's beauty match the buzz? Look and decide
 http://edition.cnn.com/2016/10/26/travel/kyoto-beautiful-scenes/index.html

だったのだが、そのページに掲載されていた20枚の写真とその写真へのコメントに、しばらく見入ってしまった。そして思ったのは、

「わたしだったらどんな20枚になるだろう」

コンデジを使いはじめて10年とすこし。この間、旅行らしい旅行はせずに過ごしたので、手持ちの画像といえばほとんどが京都。この数日、古いフォルダを順に開いて、そこからためしに20枚を選んでみた。京都症候群のCNN記者のセンスも意識しつつコメントを附し、何回かに分けて紹介してみたい。洋の東西どちらも、まったく物騒な時節ではあるが、無用の用、こんな軽い話題もまた何かの足しになるかもしれません。

1/20 盆地と三山

京都は北山東山西山に囲まれた盆地。東山からの日の出、西山への日の入り、時として美しい光景に出会える。ただそれは、ある程度の高さがあって見晴らし良好のビルから。しかし困ったことに、そんなビルはたいていの場合、周囲の景観を阻害している。

2/20 京都駅ビル

CNNの選んだ20枚のうち、5枚が京都駅附近から入選。『京都タワー』からが2、『東寺五重の塔』『京都駅ビル』『鉄道博物館』が各1。海外からの旅行者にとって、新幹線や関空特急からも見える五重の塔、京都駅と京都タワーが、期待の大事な入り口なのかもしれない。駅ビルそのものはバタ臭いが、周囲にはそれを緩和するゾーン、また近現代ビル群とは異質なゾーンもまた多い。

3/20 嵐電とバス

京都で移動といえばバス。それに愉しい乗り物と言えば嵐電で、若干だが併用軌道(市電区間)も残っている。近年、観光客でバスが混みすぎていて、京都市は料金体系をいじって地下鉄に誘導できないものかと模索中があるが、バスから見える景色がすでに観光なのだから仕方がない。

4/20 高野川のさくら

京都市街中心部は高度老齢都市。あまり外に出られなくなってしまった老人もさくらは別。やはり心が弾むようだ。車いすを押してもらって、近くの公園まで散歩する人を多くみかけるのがまさにいまこのごろ。ためしにタクシーのドライバーに訊ねてみるとよい。足の弱い老人でも、車からさくらを眺められるところはどこかと。かなりの確度でこの堤の道を走るだろう。

5/20 京に田舎あり

最近は京野菜ということで首都圏に販路を広げているが、もともとは地産地消のためのもの。正月のカシラ芋も、ずいぶんと高くなった。京都駅から徒歩圏内にレンコン田があったが、最後に見たのは数年前のことだ。建築ラッシュがすすむ今も、まだ残っているだろうか。

2017/04/08 若井 朝彦

わたしの新京都20景(2)
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